さりげなく佐伯さんの顔が近づくそのとき、ポンと音がしてエレベーターが3階に到着した。佐伯さんは「やば」と呟くと顔を離す。
エレベーターから降りると、気まずそうに頭をかく佐伯さんの背中が見える。
「約束破るところだった、マジで……」
佐伯さんが振り返ったとたん、私は腰が抜けて絨毯の廊下へ倒れこんだ。
「え!?」
佐伯さんがびっくりして手を差し出したので、とっさに私も手を伸ばす。
「どうした!?」
「こ、腰が抜けちゃって……」
私は息も絶え絶えに言うと、佐伯さんは一瞬驚いた顔をして、それから爆発したみたいに笑い出した。
「ひ、ひどい、そんな笑って」
手を引っ張られながら、私は泣きそうになった。キスされそうになって、腰抜けるとか、どんだけ経験ないんだー、恥ずかしすぎる。
なんとか立たせてもらったと思ったら、ひょいっと抱き上げられた。
「え! えーっ、大丈夫、歩けますー」
パニックになりながら訴えたけれど、佐伯さんは笑って私の言うことを聞いてくれない。
「いいからいいから、腰抜かさせたのは俺の責任だし」
佐伯さんは笑ってそういった。
人生初めてのお姫様抱っこは、爆笑されながら……でもすごい女の子として扱われてるみたいでこそばゆかった。

