猫みたいな彼女に出逢って3日

校内で彼女を見かけることはなかった

彼女について、知っていることは
同級で高二ということだけ

(もっと、知りたいな)

最近はそんなことを思うようになった



「春野せんぱーい!」

知らない後輩が教室のドアのところで
僕を探してる

(誰だっけな…)

「洸っ、行ってこいよ!」

「いいなぁ、美少年は。
それに比べて俺は冴えな…」

これ以上聞くのは面倒臭いので
呼んでいる後輩のもとへ逃げていった

「あの、放課後…屋上に来てくれませんか?」

告白かな、ちょっと面倒臭いな

「今じゃ、ダメ?」

すると、後輩は少し困った顔をした

「…わかりました」

どうせ断るから、ついて行って期待させるのも悪いけど
あそこで断るよりはマシだろう

ガチャ

あの日と比べものにならないくらい
今日は晴天だ

(今日はいないんだ…)

「あのっ、先輩?」

「あ、うん。それで?」

「入学式のとき、一目惚れしました。」

ごめん、と言いかけて

「好きじゃなくてもいいんです
これから先輩のこと知って、私のことも
知ってもらえばいいのでっ」

強いな
自慢じゃないけど告白には慣れている
だから、何度も断ってきたけど
こんな必死な子は見たことなかった

(なんか、ちがう)

「ごめんね、好きになってくれてありがとう


「どーしても、ダメですか?
彼女いませんよね?好きな人いるんですか?」

…面倒臭いな、全然引いてくれないや

困ったな、と思っていると
屋上の端、死角になって見えないところで
猫みたいな彼女が目を擦るっていた

(また寝てたんだ)

「ちょっと待っててね」

僕は彼女のもとに急いだ

彼女の手を引き、後輩の前まで連れていった

(前もやったな、こんなこと)

少々強引かな、と思いつつ彼女を
寄せ、抱きしめた

「ごめんね、僕、この人と付き合ってるんだ。だから、君の気持ちには答えられない」

後輩は、不満げな顔でこちらを見ていた

当の彼女は、腕の中でまた眠ろうとしていた

「いいんですかっ!?
その人、男好きで有名じゃないですか!
遊ばれてるだけですよっ」

顔を真っ赤にして、納得いかないと
言いたそうだった

眠そうだった彼女も、さすがの大声で目を覚ました

状況がわかったのか、ふとこちらを見て
僕から離れた

「私、洸のこと好きなの。だから、諦めて」

…そうだ、思い出した
この後輩は学年一の美少女と言われてる子だ

(振られるのが、プライドに触るんだな)

「もうっ、いいですよ!!」

後輩は走って屋上を出ていった