顔さえ良ければいいってもんじゃないわ、と言った聡美の顔がおかしくて笑ってしまった。

聡美は神苑の話題になると、あからさまに嫌な顔をするのだ。

私も彼らのことは好きではないけれど。


「―――失礼。古織柚羽はいるか?」


騒がしい声と女子の群れを越え、凛とした声が響く。

聞き間違えでなければ、今、私の名前が呼ばれた気がするのだが。


声がした方へと目を向ければ、黒縁眼鏡を掛けている男の人が立っていた。

ネクタイの色は、青。すなわち三年生。


「――…柚羽に何の用ですか?」


私の正面に座っていた聡美が、私の声になるかのように立ち上がる。

心なしか、その横顔は険しいものに見えた。


「(聡美…?)」


口をパクパクした私を見て、男が小さく息を飲んだ。

男から私を守るように、聡美が立ち塞がる。


「…何の用ですか?神苑の幹部、村井さん」


「君に関係のないことだ。そこを退け」


「嫌です。柚羽に関わらないで」