* * *
見渡す限り全てが白一色の空の下、薄い紫色の花びらが舞う。
それは私の腕に抱かれていた花が風に吹かれたせいで、散ってしまったものだ。
「ちゃんとお別れできた?」
そう言って、私の腕に乗っていた花を受け取ったのは維月だ。
覚束ない足取りで雪道を歩いてきた私を見て可笑しそうに笑うと、空いている方の手を私に差し出した。
「…できないよ。あの場所にいるだけで涙が出てくるから、それどころじゃなかった」
「それくらい、柚羽も彼のことが好きだった証拠だよ」
その通りだな、と思う。
たったの数か月しか一緒に過ごしていないけれど、その日々の中で彼はたくさんのことを教えてくれた。
「…あの男の子はどうしているの?大丈夫だった?」
「りとは…大丈夫ではないかな。気丈に振る舞っていたけど、ひとりになったら泣いていると思う」
「そうだろうね。裏切者と言われている男だけど、あの子にとっては親だったから」
私は頷いたのちに、そっと空を見上げた。
見渡す限り全てが白一色の空の下、薄い紫色の花びらが舞う。
それは私の腕に抱かれていた花が風に吹かれたせいで、散ってしまったものだ。
「ちゃんとお別れできた?」
そう言って、私の腕に乗っていた花を受け取ったのは維月だ。
覚束ない足取りで雪道を歩いてきた私を見て可笑しそうに笑うと、空いている方の手を私に差し出した。
「…できないよ。あの場所にいるだけで涙が出てくるから、それどころじゃなかった」
「それくらい、柚羽も彼のことが好きだった証拠だよ」
その通りだな、と思う。
たったの数か月しか一緒に過ごしていないけれど、その日々の中で彼はたくさんのことを教えてくれた。
「…あの男の子はどうしているの?大丈夫だった?」
「りとは…大丈夫ではないかな。気丈に振る舞っていたけど、ひとりになったら泣いていると思う」
「そうだろうね。裏切者と言われている男だけど、あの子にとっては親だったから」
私は頷いたのちに、そっと空を見上げた。


