鼓膜を突き破るような二度目の銃声が響いた。

これで全てが終わった。

そう、思っていたのに。

私の身体は、何の衝撃も痛みも起きていない。

弾かれたように開けた瞳に映ったものは、予想もしていなかった未来だった。


「(―――維月さんっ…!)」


男を撃とうとしていた維月さんが、片手で辛うじてぶら下がっている状態で、今にも歩道橋から落ちそうになっていた。

彼を囲むように崇瀬組の男たちがいたが、もう気にしてられない。

勢いよく地を蹴って駆け寄った私は、上から身を乗り出して彼の手を掴んだ。


「(維月さんっ、維月さんっ…!!)」


彼は姉が引き金を引く寸前、彼女の拳銃を撃ったのだ。だから、彼女の銃弾は私を撃ち抜くどころか、放たれていない。

その隙を狙ったのか、維月さんに返り討ちに遭って倒れ込んでいた崇瀬組の男たちが、好機と言わんばかりに彼の体を二人がかりで突き落とそうとしたのだ。


「―――…離して、柚羽」


「(嫌っ…嫌ですっ!!)」