ふ、と自嘲的な笑みがこぼれた。

姉にとっての私は、どんな状況であろうとも復讐相手でしかないらしい。


「――柚羽チャンっ!!!」


姉を止めようと、諏訪くんが駆けて来るのが視界の端で見えた。
駄目だよ、諏訪くん。来ては駄目。
そう唇を動かしたのだけれど、君は読み取ってくれただろうか。


「古織っ…!!」


りとの声が、遠くから聞こえる。
よかった、もう泣いてないのかな。


「(お姉ちゃん…)」


大好きなお姉ちゃんだった。いつの間にか、こんなにも恨まれ、憎まれていた。

姉が覚束ない足取りで近づいてくる。

その距離が縮まるほどに、鼓動が早鐘を打っている。


ねぇ、お姉ちゃん。

私たちは、どうしてこうなってしまったのだろう。

いつから、変わってしまった?

どこから、間違えた?

全部、全部…私の所為ですか?


姉が拳銃を構え直したのを見て、私は瞼を下ろした。

ここで私が散れば、姉はきっと満足する。黒い感情は消え、復讐心から解放され、やっと幸福になれるのだろう。


「      」


やっぱり、声にならないね。

最後くらい奇跡が起きないかなって、精一杯喉を動かしたのに。

維月さんのことを全て思い出したかった、と叫んだのに。