春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

「どうなってもいいって、本当に思ってた?」

思ってたよ。そう唇を動かそうとしたのに、唇が震えて動かなかった。

何で、どうしてなの?

どうしてそんなことを聞いてくるの?

そんなの、りとに関係ないじゃない。

ねぇ、近いよ、りと。


「…馬鹿だ」


私の頬を、熱い何かが滑り落ちる。

ベットの上に放り出していた腕を動かし、なんとか胸の近くへ寄せた。

変なの。私の身体なのに、震えているせいで思うがままに動かないの。

瞬きとともに外へと弾き出された雫を、拭き取らなければいけないのに。

唇を動かして、伝えなければいけないのに。

“私はこの世界から消えてしまいたかった”のだと。

伝えなければ、いけないのに。


「アンタは馬鹿だ」


目に映るもの全てが淀んだ。りとの指先が触れた瞬間、化学反応を起こしたように大粒の涙が溢れてくる。

世界がぐしゃぐしゃだ。ぽろぽろと溢れ出てくる涙のせいで、目の前にいるりとの顔も朧げ。