春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

「アンタ、自分が何を言ったか分かってる?俺が助けなかったらどうするつもりだった?何をするつもりだった?」


喉が、詰まる。音にならない言葉がたくさん浮遊しているのに、出入り口で混雑しながら押し合うように、出てこない。


「(り、)」


その名を呼ぼうとした途端に、ぎゅっと距離が縮まった。

りとの前髪がほんの少し額に触れた。強い眼差しに射抜かれ、体が金縛りにあったように動かなくなる。

ほんの僅かでも動いたら、雪のように真っ白な肌に触れてしまいそうだ。

胸の煩い音も聞こえてしまう。吐息もかかってしまう。

それくらい、りととの距離は近かった。


「あの男について行ったらどうなるか、分かっていた?」


分かってたよ。分かっていたから、ついて行ったんじゃない。

考えれば分かることなのに、どうしてそんなことを聞くの?