春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

(…りとの部屋?)


そこは、お店の内装と同じく白を基調とした家具が並んでいる部屋だった。

今流行りのバンドのCD、今月号のファッション雑誌、白いノートパソコン。ベッドシーツだけが青い、シンプルな部屋。

私は生まれて初めて男の子の部屋に入り、ドキドキしていた。
りとは友達。だけど、ひとりの男の子。何もないと思うけれど…。


「何棒立ちしてんの。退いて、やけどしそう」


ぼんやりとしていた私へと、ちょっと怒り口調の声が降る。私は弾かれたようにその場から退き、テーブルの前に腰を下ろした。

ふわりと薫るのは、カカオの甘い香り。緊張が一気に解れる。


「はい、ココア。結構熱いけど」


「(ありがとう…)」


「どういたしまして」


私はりとが持って来てくれたココアのカップを手に持った。

確かに、ずっと持っていたらやけどをしてしまいそうだ。

私はそれに何度か息を吹きかけ、喉に一口流し込んだ。

それでも熱くて堪らなくて、軽く咽てしまった私を、りとは優しい眼差しで見つめていた。