「りと坊じゃねーか。どこに行ってたんだ?うおっ、女の子連れてやがる!」
店内へと入った私たちを迎えたのは、カウンター席でグラスを片手に笑っている男性だった。カウンター越しには紫さんも居て、私の姿を見て目を丸くしている。
「おじさん、いつも言ってるけど、りと坊って呼ぶのやめて」
「いいじゃねえか、減るもんじゃねえんだし。んで、その女の子はカノジョか?ん?」
「違うよ」
「あれ、じゃあこじらせてるヤツか」
りとはため息を吐くと、入り口で棒立ちをしていた私へと手招きをした。
「古織、こっち」
誘われるがままに歩み寄れば、りとと話していたおじさんが冷やかすような声を上げている。それを見ている紫さんは苦笑を漏らしていた。
私は紫さんにぺこりと頭を下げ、住居スペースへと足を踏み入れた。
お洒落なリビングに隣接している階段を上がると、りとは一番奥の部屋の前で足を止めた。
「…ココア持って来るから入ってて」
そう言うと、駆け足で下へ降りていく。
残された私は、おずおずと部屋のドアを開けた。


