「それで、俺に何を訊きたいんだ?」


車内が暖かくなった頃、頃合いを見計らったかのように彼は口を開いた。
シートに背中を預け、ぼんやりと前を見ている。
私は画面に文字を打ち込み、そっと彼の前に出した。


【どうして、私の姉と一緒に居たのですか?】


「姉?」


【繁華街の大通りで、黒塗りの車に乗り込むところを見たんです。その車からあなたが出てくるところも。姉とはどういった関係なんですか?】


「…ああ、なるほど」


彼は納得したように頷いた。

私は早鐘を打っている鼓動を落ち着かせるように、胸の前に手を寄せた。

心臓が煩い。姉との関係を尋ねただけだというのに、こうも忙しないとは。

私はゆっくりと息を吐き出しながら、彼の言葉を待った。


「お前の姉…ミズナは、俺の親父の愛人だ」


愛人?それって、妻でも恋人でもない関係だよね?

私の姉…古織瑞茄が、彼の父親の愛人なの?


「俺は繁華街に行くついでに、親父の車に乗っていた。丁度お前の姉も繁華街に居たらしく、乗せていくことになってな」