リースが飾られている白い扉へと、恐る恐る手を伸ばす。

泥棒でもないのに不審な動きをしてしまうのは、この店の雰囲気が大人過ぎるからだ。
中身は普通の喫茶店だと思うけれど、なんだか入りづらかった。


「柚羽、大丈夫?」


扉の前で硬直している私へと、心配そうな声が掛けられる。

私はコクリと頷き、意を決してドアノブに手を掛けた。

そうして開け放った扉の向こうでは、見知った顔ぶれが談笑していた。


「ようこそ、いらっしゃいませ」


私たちを出迎えてくれたのは、優美に微笑む男性だった。
りとの保護者で、諏訪くんを手当てしてくれた――


「古織、永瀬」


私たちの来訪に気づいたりとが、ソファから立ち上がってやって来た。
だいぶ前に帰宅していたのだろうか。制服ではなく、私服を身に纏っている。


「紫さん、二人は昨日あの場に居た…」


「覚えていますよ」


そうだ、紫さんという人だ。彼は私たちを見ると、柔らかに笑った。


「こんなところまで足を運んでいただき、ありがとうございます」


私は咄嗟に首を横に振った。聡美はその美しい笑顔にやられたのか、顔を真っ赤にしている。