「煽ってんのか?」

「へ?」

「そんな目すんな、ここで抱くぞ」

「っ」

いったいどんな目をしてるというのか
驚き過ぎて目を見開くと

目の前のネクタイが動いた

目線を合わせるように屈んだ柊
射抜くような漆黒の瞳から目が離せない

壁から離れた手が私の頭の上に置かれ

「目ぇ閉じろ」と声が聞こえると同時に唇に温かいものが触れた

キスされたと気づいたのは
柊が離れたあと

ファーストキスだったのに・・・とか
好きな人とするって決めてた・・・とか
星空の綺麗な公園で・・・とか

思い描いていた初めてじゃなくて
急に悲しくなる

さっき会ったばかりの
名前しか知らない奴に奪われた唇が切なくて
足から力が抜けるようにズルズルと座り込んだ


「おい!何してる!」

放心状態の私の耳に飛び込んできたのは
聞き慣れた安心する声で

ホッとすると同時に全身の力が抜けた


「おい!はなっ」



・・・・・・
・・・



頭を撫でられる感覚が心地よくて

温かい方へすり寄った

「・・・かの」

重い瞼を開けると目の前に花流が座っていた

「・・・っ」