「……雄楽」



次の日の朝練。



とりあえずキャプテンである先輩に、昨日の欠席を詫び、



朝練の準備に取りかかっていた雄楽に、



マネージャーの瑞香(みずか)が声をかけた。




彼女とは小学校からの腐れ縁。



「なに?」



近寄ってきた瑞香に振り向くことなく、雄楽が聞き返す。



「なんで部活休んだりしたの?」



そんな雄楽に、険しい顔で瑞香は問いかけた。



「……用事」


「新人戦前の練習より大事な?」


「…………」



思わず口ごもる雄楽が、準備していた手を止めた。



それを見計らったかのように、瑞香は言葉を続けていく。



「高月先輩……。あの人に会いに行ってたんでしょ?」



瑞香の口から出された聖梨の名前に、雄楽は思わず瑞香へと視線を向けた。



漸く雄楽が自分の方を向いたキッカケが、



聖梨の名前であることが悔しい。



「藍楽に聞いた」



聖梨が皇楽を好きであったこと。


雄楽が聖梨を好きなこと。



「こんな時期に休んだりして……レギュラー外されても良いの?」



瑞香の言葉を振り払い、



苦い顔した雄楽は踵を返した。