『ひぃちゃん、熱出したんだって』



放課後になり、



部活に向かう雄楽の携帯電話に藍楽から届いたメール。




それを見るなり、



練習用のスパイクを握っていた雄楽の手がゆっくり降ろされた。




「雄楽っ。行くぞ」



そんな自分を呼ぶチームメイトの声に、



雄楽はゆっくりと顔を左右に振った。



「悪いっ。今日休む」


「えっ? おいっ! 雄楽っ」



呼び止めるチームメイトも振り切り、



雄楽は勢い良く来た道を引き返し始めた。




引き返した雄楽が向かった先、



「……聖梨なら休みだけど?」



二年生の教室が並ぶ校舎の三階の廊下で、



息を切らした雄楽にカバンを提げた優季が声をかけた。




「……熱出したって……」



休みとわかってて尚、二年生の教室に現れた雄楽を優季が不思議そうに見つめる。



聖梨の居ない教室に雄楽が現れた理由。



「住所……教えてください」



聖梨の元へ向かう術を手に入れる為……。



意を決したように口を開いた雄楽を、



優季はじっと上から下まで見つめていた。