聖梨が彼を見つけたのは、例の如く帰り際を後輩女子軍団に囲まれていた時だった。






「聖梨サマ~! わたしが作ったクッキー受け取ってくださいっ!」


「ズルイわっっ! 聖梨サマ! わたしのガトーショコラも~!」



毎度毎度可愛らしくラッピングをしてくれている差し入れを、



「ありがとう」



笑顔で受け取りながら、いつも胸に思っていた。




……ホントは作ったモノを貰うより、作ったモノをあげたいのに……。




残念ながら、聖梨のこの願いが叶ったことは無い……。




みんなの王子様(勝手に)である聖梨が求める王子様……。



身長は聖梨より高くて、



凛々しく男らしい顔立ちで、



何でもスマートにこなせて、



爽やかでクールでどこか熱い物を秘めていて……。




女子軍団にもみくちゃにされる中で、



聖梨の視界を横切ったのは、



聖梨よりも高いと思しき長身に、



キリッと上がった眉と、


少し下がった甘めのまなじり。



固く結ばれた大きめな唇。



……全てをまとめれば、



つまりは、




聖梨の理想の王子様がそこに居た。