「居るんだよねぇ……。皇兄の見た目だけに一目惚れしちゃう女の子」



嘆くように呟く藍楽に、自分もその一人であることがやたらに居心地悪い。



「雄兄も言ってたでしょ? 見た目だけで惚れたなら皇兄はオススメしないって」



残りの朝ご飯を口にかきこんだ藍楽がこう言って聖梨の表情を窺った。



「わたしは……」




皇楽を好きと言い切るには、皇楽のことを知らなすぎる。



キッカケは例え一目惚れであれ、



そこから始まる恋だって、きっと素敵な展開が待っている!



その実態が……口も性格も悪い超主婦な王子様だったとしても。



聖梨の乙女魂がそう言ってきかないのだ……。




「わたし的にはひぃちゃん(聖梨の呼び名)が気に入ってるから教えちゃうけどさ~」



食べ終えて空っぽになった食器を重ねながら、藍楽は淡々と言葉を繋げていく。


「皇兄って」



重ねた食器を持ち上げた藍楽を、聖梨が固唾を飲んで見つめる。



「彼女居るんだよね。華奢でちっちゃくて、超可愛い」



ごちそうさま~


なんて言いながら横切っていく藍楽に、聖梨は頭の中は真っ白になったのだった……。