皇楽の言葉に、聖梨はぐうの音も出ない……。



確かに、自分が皇楽の手を治すことなんて不可能。




「バイトも休まなきゃなんないし」



「左手……」



紅茶を運ぶなら左手でもいけるのでは?



なんて口に出そうとしたところで、



「金持ちのお嬢様がっ。茶運ぶだけがバイトなわけないだろっ。ナメてんのか?」



物凄いバカにしたような眼差しで見下ろされ、キツい一言を食らうばかり……。



何を言っても許してもらえそうもないこの状況に、聖梨は泣きそうになる。



ここで泣いたところで、この超絶クール男に更にバカにされて蔑まれるのは必至。



「だったら!」




こうなったら自棄だ。



聖梨はぐっと拳を作って、口を開く。



そして、




「右手が治るまで何でもするっ!!」




意を決したように大きな声をあげて、皇楽の瞳を見つめた。




それを聞いた途端、



「へぇ? なんでも?」



ずっと不機嫌に顔をしかめていた皇楽の顔が、初めて変わる。



大きめな口の端を上げ、



目を細めて不敵に笑う。