私、平野 千帆。ごく平凡な家庭の平凡な顔に平凡な体型。だけど頭は悪く、運動もいまいちできない。彼氏なんて生きてきてできたことはない…。ただ優だけをみてた。
私の家の前の幼馴染、金城 優。顔もイケメンで身長も180センチくらいあるから昔からモテ期が来ないことなんてなかった。彼女も見せつけられるほどたくさんいた…。
ちなみに勉強も運動だってできちゃう。私も彼女に負けじとサッカー部だった優の応援だって行った。
ずっとずっと誰よりも前から好きだった。
卒業式も終わり、春休みは全く外に出てないから家に引きこもり状態。
友達とも遊べるほど元気がないわけでもないけど今はそんな気分じゃなかった。
優と離れることなんて初めから分かってた。私の頭では優の目指してる高校はとても行けないから離れることなんて分かってた。でもこんなに涙がとまらない。私は相当優のことが好きみたいだ。
卒業式以来会ってない。写真を見てると涙が余計に止まらない。
「ゆ…う…ひっ…うぅ」
ピコンッ!
スマホに目を向けたらそこには優の名前。
とっさに起き上がってスマホを開いた。
『今家の前にいるんだけど』
「え…うそどうしよ…目パンパンだよ…」
腫れぼったい目のまま会うのは嫌だけど会いに来てくれたから出るしかない…。
急いで顔を洗って鏡を見る。
「よし」
優に会うのは久しぶり。ドアを開けるのが緊張してしまう。
「はーい」
「おう、おかんがこれ持ってけって」
「たけのこじゃん私大好き」
「知ってる」
相変わらず、スウェット姿でもかっこよくみえる優。
「お前泣いてた?」
「えっあーなんか寂しくなっちゃって…みんなと離れちゃうしね」
「あぁそうだな」
「優、高校離れちゃうね」
「そうだな」
優はやっぱりなんとも思ってなかったのかな…。
「お前さ」
「ぁあそういえばさ」
しまった。何か言おうとしてたのに。沈黙続いちゃうから話しちゃった。
「ごめんなに」
「ううんなんでもない…優はなに言おうとしたの」
「あーやっぱいいわ」
なんか気まずい。優はなにもゆってくれない。なにを言おうとしたのか気になるけどなぜか聞けない。
「…そっかあのぉえっと…高校頑張ろうね」
「あぁじゃ俺帰るわ」
「ねぇ優‼︎」
やばい引き止めちゃった。なにを言おうとしたの私…
「なに」
「えっと…私たけのこ大好きだからほんとにありが…と」
「ははっなんだよお前いっぱい食えよ」
「うん‼︎じゃあまたね」
「おう」
行っちゃった。優が家に入る前にバイバイして中に入る。それが2人で別れる時の決まり。昔は優の家のドアがなかなか届かなくって背伸びして開けてたっけ。だめだ。また涙が出ちゃう。またベットに入って泣いてしまう。
こんなに好きならさっき告白してしまえばよかった。たけのこ大好きしか言えない私は馬鹿だ。振られてしまえば吹っ切れるかもしれないのに。優は私のことは女の子としてはみてないのは分かってる。それでも優を諦められない。
ガチャ
「ただいまー」
コンコン
「おい、まだ寝てんのかよ入るぞ」
「ぅう…」
「なんだよお前泣いてんの」
「お兄ちゃんはあっち行ってよ」
「分かった優だろ」
「なんで分かんのよ」
「さっき優馬と話してて沙良と優が離れるってな」
「優馬くんが?…」
「優、結構家で落ち込んでるって言ってた」
「そんな風に見えるだけだよ」
「ま、そんな落ち込むなよ、俺はお風呂〜」
優が落ち込んでたなんてそんなことあるはずない。そうだとしたらさっきあんな風に素っ気ないわけがない。
優のおにちゃん優馬くんと私のお兄ちゃん蓮は高校3年同級生で、これから優が通う優馬と同じ学校。2人でも幼馴染だから仲が良く、家に来たり、行ったりなんて私もよく遊んでもらった。優馬くんも、優と少し似てて優よりも身長が高くてかっこいい。
なんで私だけ…。もっと勉強すればよかった。優と同じがよかった。
その夜は泣き疲れてご飯も食べないで寝てしまった。