もう、どうやったって消すことができない、



10年分の思い出。


10年分の想い。




「諦める?」



目を開けて、挑発的な視線を翔吾に送ると、翔吾はそんな俺に「え?」と声を漏らす。



「そんなこと、ただの一度だって考えたことないね」



唇が自然と弧を描くのは、自信の表れ。



何があったって俺は、結衣との未来を諦めたりしない。


いつか必ず、曇り一つない笑顔のキミの手をひいて、キミとの未来を歩いてみせるんだ。



何年かかろうと。


何十年かかろうと───。





翔吾は何度か瞬きをすると、眉尻を下げ。



「そうか。ならよかった!」



そう言って、心底安心したように笑った。