でも、そうか。


この場所は、いつか別の誰かの場所になってしまうんだ。


はるくんが、大切だと思う誰かの場所に。



そしてそれは、絶対に私ではない。



はるくんが、知らない女の子と手を繋いでいる後ろ姿が脳裏に浮かび、胸が疼いたその時。



「結衣っ!!!!」



つい今まで、頭の中の全部を支配していた彼の声が聞こえてきて、弾かれるように声の方へと顔を向ける。



「はる……くん……」



そこには、崖の上で膝をつき、私に向かって目一杯手を伸ばすはるくんの姿があって……。



来て……くれた。



涙でぼやけていく彼へと、私も手を伸ばした。



────ドサッ!



腕を引かれ、勢い余った体は大きくて温かいものに包まれる。


「何やってんだバカッ」


「ごめんなさい……」



私を閉じ込めた腕に、キツく力を込めるはるくん。


そんな彼の心臓はものすごい速さで鼓動を刻んでいた。


体も熱くなっているし、息も凄く上がっている。


必死に探してくれていた証拠。




「悠斗!!二人共いたのか!?」



古賀さんは、はるくんの後から走って来た厚木くんに無事救出される。


そこに先生達も到着して、支えられるようにして連れて行かれた。