確かに、好きな人に“好き”と伝えられる人達が羨ましかった。


はるくんにこの気持ちを伝えたらどうなるのかな?って、想像してしまったことだってあった。



だけど……。


すぐに声が聞こえてくるの。



“あの子と関わらないで”



そう言うお母さんの声が。



はるくんと仲良くすることだって許されないのに、はるくんに想いを伝えてその先の未来を望むなんて……。


そんなこと、できるはずないよ……。



「何かわけありなんだ?」



言葉に詰まり俯く私に、古賀さんは小さく溜息をつく。



「まぁ、深くは突っ込まないけど。何にしても、伝えずに後悔するのだけはやめた方がいいよ。伝えて後悔するより、ずっと辛いから」



まるで、“そういうこと”があったかのような古賀さんの口振りに思わず顔を上げる。



「後悔……?」


「尾上が、ずっとあんたを探してくれるとは思わない方がいいってことだよ。誰かのものになってからじゃ、伝えたいと思っても遅いんだ」



ドクッと心臓が脈打つ。


はるくんが、誰かのものになってしまうなんて考えたこともなかった。


はるくんが私のものだなんて、そんなことただの一度だって思ったことはない。


だけど、はるくんの隣だけは。


10年前のあの日、大切な人を裏切ってでも守ったこの場所だけは、私の場所だって……。