外はまだほんの少し、桜の香りが残っていた。
学校の桜はもう大分葉桜になってしまったけど、マンション脇の公園の桜がまだしぶとく咲き続けているから、きっとそのせいだろう。
玄関前の廊下から、眺めのいい8階からの景色を眺めながら一階へ下りるためエレベーターへと向かう。
下へ行くためのボタンを押すと、すぐにエレベーターがやって来たので、それに乗り込んだ。
7階……6階……。
階数を知らせるランプが点滅するのを意味もなく眺めちゃうのは一体何でなんだろうな……。
なんて、どうでもいいことを考えていたら、そのランプが点灯したまま4階部分で止まった。
思わずドキンと心臓が高鳴る。
だってこの階は、いつも“彼”が乗り込んでくる階だから────。
「はよっす」
「お、おはようっ!」
思った通り。
開いた扉から現れたのは“彼”だった。
色素が薄くてほんのり茶色の髪。
私より少し焼けた肌。
整ったくっきり二重。
女の子みたいに真っ赤な唇。
背はまた伸びたのかな?
この前の身体測定で177センチだって言ってたけど、その時よりもまた少し大きくなった気がする。
思わず目が釘付けになってしまうほど整ったルックスの彼───尾上悠斗(おのえはると)くんは、同い年で10年来の付き合いになる、いわゆる幼なじみというやつだ。



