「蒔田さんこっちこっち!」



初めて訪れた駅に戸惑いながら、キョロキョロ辺りを見回していると、こちらに大きく手を振っているジャージ姿の厚木くんを見つけた。



「おはよー!蒔田さん」


「お、おはよう!」


「今日はよろしく!」


「こ、こちらこそ、よろしくね」



今日は、クラスメイト達との親睦も兼ねた学年合同レクレーションの日。


レクレーションの内容は毎年恒例、クイズラリー形式の登山らしい。


私達のグループは、集合場所になっている登山口の最寄りの駅で待ち合わせていた。



「あれ?みんなはまだ来てないの……?」



実は、今日も出発時刻ギリギリに起きてしまった私。


慌てて家を出て何とか待ち合わせ時間ピッタリに間に合った。


それでも、みんなを待たせてしまっているかなって心配しながらここまで来たんだけど……。



「うん。俺さ?甘かったなって思ってんだよね」


「甘い?」


「俺らのグループさ?そもそも自由人の集まりじゃん?待ち合わせとか、んな悠長なこと言ってる場合じゃなかったよね。もはや、一人一人家まで迎えに行くくらいのガッツが必要だったと思うわけ」


「え、えーと……??」



どこか哀愁漂う目をした厚木くんが、ジャージのポケットから取り出したスマホを私に差し出す。