あの時もそうだ。


嫌がらせを受けていたことは誰にも話していなかった。


嫌がらせ自体も、誰にも分からないようにされていたし。


だから、誰にも見つからない場所で、こっそり泣いていたのに……



はるくんは、そんな私を見つけてくれた。



何ではるくんには何でもわかってしまうんだろう?



「何驚いてんの」


「あ……いや、はるくん凄いなって思って……。私、そんなわかりやすいのかな?」



もしかして、頭で考えたことがはるくんには聞こえちゃってるとか……?


昔、何かの小説でそんな物語があったような……。



「バーカ」


「え!?」



ふわり、はるくんの香りがして、思わずはるくんに抱きしめられたのかと思ってしまった。


はるくんは私に歩み寄ると、私の肩にトンと額を乗せる。


そこからゆっくりと顔を持ち上げると、はるくんは息がかかるほど近い距離で私に耳打ちをした。



「……どれだけ結衣のこと見てきたと思ってんの?」



はるくんが声変わりをしたのが、確か中学2年生の時。


初めは聞き慣れなかった低音ボイスも、今ではすっかり慣れてしまったのに……。


耳元で囁いたはるくんの声は、まるで知らない男の人の声みたいだった。