“勝手にしなさい”というお母さんの言葉の通り、私達がこうして一緒にいることに、お母さんは前みたいにとやかく言わなくなった。
だけど、心の奥ではどう思っているんだろう?
すぐに許してもらおうとは思ってるわけじゃない。
お母さんだって、そんなに簡単に昔の出来事を払拭できるわけがないと思うし。
だけどやっぱり、お母さんにだけは、はるくんとのことをちゃんとわかってもらいたいよ……。
はるくんの手が、ポンと私の頭に乗せられて、自分が難しい顔をしていたことに気づく。
そんな私の様子にはるくんは、クスッと息を零すと。
「焦らず、ゆっくりわかってもらえばいいよ。時間はいくらだってあるんだから」
そう言って穏やかな笑みを浮かべた。
────“時間はいくらだってある”
「……うん。そうだね」
今の私達には、二人一緒の未来がある。
ずっとずっと、諦めかけていた未来が。
諦めきれなかった未来が。
もう今は“ここ”にある。
だから、大丈夫。
焦る必要なんてない。
何も、怖くなんかない。
お母さんにわかってもらえる、その日がくるまで、はるくんと一緒に伝え続ければいいんだから。
「それじゃ、行きますか?」
「うん!」
差し出されたはるくんの手を取り、玄関から一歩踏み出す。
「行ってきます」と口にして、玄関の扉を閉めようとした時だ。



