「結衣の友達だってヤツらに、結衣の母親に自己紹介してくれって頼んだんです。ちょうど今日、結衣と俺をどう仲直りさせようかって集まってたらしくて」


「……そんなことのために、こんな時間に……?」


「みんな、結衣のことが好きなんですよ」



母さんに向けて凛と微笑むはるくんの横顔を見ながら、私はもう、どうしたって涙が堪えられなくなっていた。



「お願いします。結衣の側にいさせてください。俺達は……俺は、これからも結衣の側にいたい。俺の未来には、結衣が必要なんです」


「お願いします」ともう一度言って、はるくんはお母さんに深く頭を下げた。


とめどなく溢れてくる涙を拭いながら、私もはるくんに続いて深く頭を下げる。



神様。お願いします。


もう、他には何も願わないから。


どうか。


どうか、はるくんとの未来を────。



「勝手にしなさい……」


「お母さ……」


「留学の資料も捨てておく。その代わり、あなたがどう落ちぶれても、私は知らないから」



許したとも、そうでないとも取れる言葉を残し、お母さんは私達に背を向け立ち去ろうとする。


だけど、はるくんのお母さんがそれを阻んだ。



「私、ずっとずっと後悔していたの。あなたの気持ちに気づいてあげられなかったこと。大好きだったあなたの支えに、なれなかったこと。本当に、本当にごめんなさい……」



はるくんのお母さんは、涙を零しそう言うと、私達と同じように深く、深く頭を下げた。