ぷはっと顔を上げると、耳まで赤く染めたはるくんが、手の甲で口元を押さえ、そっぽを向いていた。



「こういうこと言うの、小っ恥ずかしくて苦手なんだよ」


「へ?」


「本当、ずるいよね」



意味がわからず目を瞬かせていれば、腰に回されたはるくんの手に強く引き寄せられる。


あまりの至近距離に、心臓が甘く鼓動を打った。


すると、そんな私の様子に気づいたはるくんがふっと笑い、私の額に自分の額をコツンとくっつける。



「俺はね、結衣に一生分の恋を捧げるってずっと昔に決めたんだよ」


「一生分……?」


「そう。一生分。昔、俺がここで言ったこと、覚えてない?」



そう問われ、頭の中でずっと鍵かかかっていた扉が開く音がした。


昔、はるくんがここで私に言った言葉。


ずっと、ずっと、思い出せなかった大切な大切な言葉。



────『ならないよ。結衣は、絶対に一人になんてならない』



────『俺が、一生結衣の側にいる。一生結衣の側で、結衣を大切にする』



「……っ!」



はるくんは、こんなにも前から未来を誓ってくれていたのに。


私はいつからか、はるくんとの未来はないと決めつけ、見失ってしまっていたんだ。


本当は、手を伸ばせば、声をあげれば、いつだって届く距離にキミはいたのに……。



「思い出した?だから、たとえ認めてもらうのに一生かかったって、俺はへでもないわけ」