「やっと、手、伸ばしてくれた」
はるくんが指の背で、愛おしそうに私の頬をなでる。
「てか、誰かのものって、何?」
「っ……そ、それは……」
「もしかして、この間のマネージャーとのやつ?」
「え……」
もしかして……はるくん、あの時気づいてたの……?
「結衣が何を見たのか知らないけど、俺は、誰かのものになんかならないよ。今もこれからも、全部結衣だけのものだ」
ボロボロボロボロ。
止まったと思った涙が、また溢れ出してくる。
嘘だ……。
こんなの、夢に決まってる。
「これからもずっと、俺は結衣の側にいる。俺が、結衣の側じゃなきゃ嫌なんだ」
私の涙を一粒一粒拭いながら、はるくんが「結衣」と優しく呼んだ。
「結衣。俺は、結衣が好きだよ」
私の大好きな、強くて真っ直ぐな瞳に私を映して、はるくんは極上に優しく微笑んだ。
「……っ」
……信じられない。
ずっと、私達に未来なんてないと思ってた。
はるくんと手を繋いで歩ける未来。
そんなのは、夢のまた夢だって。
望むことすらおこがましいって。
だけど……。
本当は、ずっと願っていた。
もしも奇跡が起こるなら、ずっとずっと、はるくんと一緒にいたいって。
「私で……いいの?」
「結衣がいいんだよ」
「だ、だって!もしかしたらこの先、ずっとお母さんに認めてもらえないかもしれないんだよ?私といたら、はるくんは幸せになれないかもしれない」
「〜っあ〜も〜!」
「ぶふっ!!」
苛立ちの声を上げたはるくんの胸に、思い切り顔を押し付けられ危うく窒息しそうになる。