私は、お母さんの所有物じゃないのに。


私には私の意思があるのに。



「……私の為とか言って、お母さんは、全部自分のためじゃない……」



憤りからか、握りしめた手が小刻みに震えていた。



「お母さんはただ、私とはるくんを引き離したいだけじゃない!!!」



私がそう叫ぶと、お母さんの眉間に深いしわが刻まれたのがわかった。


だけど、私の思いは堰を切ったように留まることを知らない。



「何でそこまでするの?はるくんが、お母さんに何かした?お母さんがはるくんのお母さんと何があったかなんて知らない。だけど、私とはるくんには、私とはるくんの世界があるの!」


「……あなた達の世界……?」



お母さんは、ゾッとするような低い声でそう呟く。


思わずたじろいでしまいそうになったけど、ここで怯むわけにはいかない。



私は、みんなと───はるくんと、離れたくなんかないんだ。



握っている手に、さらに力を込める。



ずっと、弱虫な自分が嫌いだった。


本当は、初めからこうしてお母さんと向き合っていれば、10年もの間、はるくんとの関係を秘密にする必要なんてなかったかもしれないのに。


それなのに、弱虫な私は、お母さんに立ち向かう勇気がなくて、それをいつも人のせいにばかりしていた。


お母さんを傷つけたくないから。