恐らく、俺が結衣に好意を抱いているように、結衣もまた、俺に好意を寄せてくれているのは、10年も一緒にいれば何となくわかった。
だけど、結衣はいつもどこか諦めているんだ。
いつか、俺から離れるつもりでいる。
気づいてたよ。
そんなの。
そんな結衣に、俺の気持ちを伝える勇気なんて、とてもじゃないけどあるわけがなかった。
今はまだ、このままの関係でもいい。
一緒にいればいつか、結衣が俺との未来に手を伸ばしてくれる日が来るかもしれない。
そうしたら、俺の気持ちを伝えればいいって。そう思ってた。
障害はたくさんあるけれど、結衣が俺との未来を望んでくれるのなら、結衣も結衣との未来も全部、俺の全てを賭けて守る覚悟はできていたんだ。
だけど……。
結局、結衣が俺に手を伸ばすことは、一度もなかった。
そして、最後の最後で、焦って伸ばした俺の手を、結衣は振り払ったんだ。
「結局、結衣に俺は必要なかったんだよ。好き合ってればいいってもんじゃない。いつか離れるのが前提で手に入れたって仕方ないんだ」
俺じゃなければ違ったのかな?
結衣の母親が、何で母さんと仲が悪いのかなんて知らないけど、母さんの息子である俺じゃなかったら。
ずっと隣で笑っててくれたのか?
だったら俺達は、出逢うことすら間違っていたってことじゃないか。



