それを言い出せずに、きっとずっとたくさん苦しんできたのに。


俺は、俺の願望ばかりを追いかけて、結衣も同じ気持ちでいてくれてると疑うことすらしなかった。

結果、結衣の気持ちに気づいてやることが出来なかった。


結衣のことが好きだと自覚した日から、結衣を守るって決めていたのに。


結衣を傷つけていたのは、紛れもなくこの俺だ。



「……最悪だな俺……」



「相当やられてんな」



聞き覚えのある声がして、目を覆っていた腕をどかせば、冷ややかな表情で俺を見下ろす翔吾が立っていた。



「……万年補欠がサボりかよ」


「なっ…!あのなぁ!お前を心配して練習抜けてきたんだぞ!?つか、一年でスタメンのお前が特殊なんだからな!?俺がショボイみたいに言わないでくれる!?」


「別に頼んでない」


「っかー!可愛くねー!!」



そう言って翔吾は、俺の隣にドカッっと腰を下ろす。



「座んな」


「別にいいだろ」


「よくない。悪いけど、一人にしてくんない?」



ごろっと寝返りを打って翔吾に背を向けると、背後からあからさまにでかい溜息が聞こえてきた。



うぜぇ……。



「お前、何拗ねてんだよ」


「拗ねてない」


「拗ねてるだろーが。じゃあ何でこの間、蒔田さんをあんな風に突き放したりしたんだよ?」