というか、見るもの聞くもの全て、煩わしい。


何にも心が動かない。


何もかもがどうでもいい。



最近の俺は、確かにどうかしてる……。



モヤがかかったみたいに全く働かない思考回路。


鉛のように重たく感じる体。


何に対してもやる気が起きない……のは、わりといつものことだけど。


とにかく、俺の思考回路はあの日のあの時で停止したまま、今も動き出せないままでいる。



『はるくんと一緒にいると、私が辛いの』


『だから、お願い。もう、ほっといて』



あの日、結衣が言った言葉が、頭の中でずっとリフレインしている。



……同じ気持ちだと思ってたんだ。


確かにたくさんの柵はあるけれど、一筋縄ではいかないかもしれないけれど。


俺と結衣の気持ちが同じ方向さえ向いていれば、どんな柵も乗り越えていけるって。


そう信じてた。


だから、どんなことがあろうと、結衣の手だけは離すつもりなんてなかったんだ。


手さえ離さなければ、いつか全てを乗り越えて、結衣と二人、笑顔で寄り添える日々が来ると信じていたから。



だけど……全ては俺の願望に過ぎなかった。



俺は、知らず知らずのうちに結衣を傷つけていたんだ。


10年前、俺が結衣の側を願ったせいで、結衣は母親との狭間でずっと一人で耐えていたのに。