気づかれないよう、目だけ動かしはるくんを見上げる。


そこには、相変わらず整った顔立ちのはるくんが、溜息をつきながら去っていく先輩達の背を目で追っていた。



……先輩達には申し訳ないけれど、今はそれどころじゃない。


だって……はるくんがこんなに近くにいる。


どうしよう。


すごく嬉しい……。



肩に置かれたままのはるくんの手から伝わる体温。


それだけで、みるみる鼓動が加速していく。


今、はるくんの思考の中にちょっとでも私がいるのだと思うとまた嬉しくて、涙が出そうになった。



恋をしている人は、みんなそうなのかな?


好きな人に触れられることがこんなにも嬉しかったり、好きな人を見つめているだけで涙が出そうになったり。


恋をしている人は、みんなこんな気持ちになるの?


こんなの、心が一つじゃ到底足りないよ……。



はるくんの綺麗な横顔を見つめていれば、ふいにはるくんの視線が私へと落ちてきて、思わず心臓が跳ね上がった。


感情の読み取れないはるくんの瞳の奥に、戸惑う私が映し出されている。



「ん」


「あ、ありがとう」



はるくんが差し出した私のスマホを、恐る恐る受け取ると。



「何してんの?こんなとこで」


「……っ」



そう問われ、またしても心臓が跳ね上がってしまった。



そ、そうだよね。


不思議に思うのも当たり前だよね。