私は、あの時自分の気持ちのままに頷いた。


あの時の気持ちに、1ミリも嘘はない。


もちろん今だって、許されるのであれば、はるくんと一緒にいたいよ。


だけど……。


「……あれは、間違い。咄嗟にああ言うしかなかった」


「何で、そんな嘘つくんだよ」


「っ嘘じゃない!」


「……じゃあ何で、そんな泣きそうな顔するわけ?」



大切な人を裏切ってでもあなたの側を願った、10年前の無邪気な私はもういない。


はるくんの側を願うということがどういうことなのか。


誰を傷つけ。


誰を苦しめて。


自分自身もどれだけ傷つかなきゃならないか、今の私は全部知っている。


それでも、無邪気にあなたの側を願うなんて、できるはずがない。


まるで壊れ物にでも触るように、私の頬に触れるはるくんの手から、逃れるように顔を俯ける。



「もう、はるくんとは一緒にいられないの」


「……何で?」



私にとって、はるくんは出逢った日からずっと太陽みたいな存在だった。


影に紛れて、今にも消えてしまいそうな私を、いつだって照らしてくれる存在。


迷ったり、立ち止まって動けなくなってしまった時も、いつだって進むべき道を照らしてくれた。



お母さんが、私を見てくれない時も。


友達が次から次に離れていってしまった時も。