そういえば、前にもこんなことがあったな……。


こんな切迫した状況なのに変かもしれないけれど、思い出したのは小さい頃はるくんと毎日のようにしていた“かくれんぼ”。


どんなに上手に隠れても、なぜかはるくんはいつも私を見つけ出すんだ。


────ガラッ。



教室の扉が開き、はるくんの足音が徐々に近づいてくる。



────そう。



はるくんは、簡単に私を見つけ出し、いつもこう言う。



「俺から隠れようなんて、100万年早いよ」



その言葉は、私の頭の中で再生されたものなんかではなく、教卓に隠れた私を見つけたはるくんから発せられたものだった。


はるくんは、ギッという音と共に教卓の位置をずらすと、私の前に屈み、“観念しろ”と言うように首を傾げ見つめてくる。



「……ごめん……なさい……」


「それは、逃げたことに?それとも、もう俺と一緒にいられないことに?」



空き教室は、埃っぽいせいか窓が開け放たれていた。


そのせいで、カーテンが風で膨らんだり萎んだり。


教室内には、外で鳴くセミの声だけが響いている。



「結衣は、もう俺と一緒にいたくなくなった?前にいたいって言ってくれたのは、何かの間違い?」



“結衣は俺と一緒にいたい?”



三者面談の数日前、はるくんにそう問われたことを思い出す。