“廊下は走るな!”なんてポスターは完全に無視で、全力疾走。


だけど、私が全力で走ったところで、昔から常にリレーの選手に抜擢されてばかりだったはるくんに、かなうはずがない。


どうしよう。


このままじゃ追いつかれちゃうよ!



日頃の運動不足が祟ってか、少し走っただけで酸素不足の不甲斐なさといったら。


ヨロヨロと廊下の角を曲がると、物置として使われている空き教室が目に飛び込んできて、私は思わずそこに飛び込んだ。


以前、担任の大津先生に頼まれごとをした時に知った場所だ。


この教室の鍵が壊れているのも、その時に確認済み。


角を曲がってすぐの教室だから、もしかしたら教室に入ったことは気づかれないかもしれない。


空き教室の中のガラクタになっている壊れた教卓の下に隠れ、息を潜めることにした。



どうか……どうか、気づかれませんように……。



静かな教室内。


私を探しているのか、廊下を歩くはるくんの足音が止まる。


息をするだけでも気づかれてしまいそうで、上がった呼吸を必死に整えるものの、苦しくて肺が潰れてしまいそうだ。


それに加えて、はるくんから隠れている緊張感。


心臓が、耳の奥で脈打っている。