動揺した私は、とっさに。



「こ、こないでっ!!」



そう叫んでしまいはっとする。


さすがのはるくんも、それには驚いたように目を丸くし、ピタッと足を止めた。



「あのっ……ごめんなさい……。えっと……私……」


「……結衣さ、朝から俺のこと避けてるよね?」


「……っ」


「それって、何で?」



そうだよね……。


鋭いはるくんのことだもん。


あんなあからさまに避けていたら、気づかないはずがないよね……。



地面に落としていた視線を恐る恐る上げる。


ポーカーフェイスなはるくんの表情からは何も読み取れない。


だけど多分これは……怒っている時のはるくんだ。


その証拠に、はるくんは腕を組んでいた。


“何で?”と理由を尋ねているけれど、はるくんはきっと気づいてる。


私の“弱さ”に。



そう思った途端、体が勝手に逃げるように回れ右をしていた。


私は、足早にその場を立ち去ろうとする。



何も言わずこんな行動を取るなんて最低だ。


だけど、はるくんの“何で?”に対する適切な答えが浮かばない。



───はるくんの側にいれば、お母さんを傷つけてしまうから?


───はるくんや、はるくんのお母さんを傷つけてしまうから?


───私には、はるくんの隣にいる資格なんてないから?


───私が側にいたら、はるくんは幸せになれないから?