私が……いけないんだ。


私がお母さんを傷つけたから……。



「今度こそ、もう二度とうちの子に近づかないで!!今度近づいたら、私は絶対にあなたを許さない!!」



はるくんをまるで汚いものでも見るかのように睨みつけるお母さん。


私の頬を一筋の涙が伝って落ちていく。



「結衣!!こっちに来なさい!!帰るわよっ!!」



怒鳴り散らすお母さんの声にも、もう何も感じなくなっていた。



「結衣……」



ふらり、お母さんの方へと歩き出す私の手をはるくんの手が引き止める。



繋がれた手のひらはやっぱり温かくて、やっぱり優しい。


大きくて大好きな、はるくんの手。



本当はずっとずっと、願ってた。


この手を取り、あなたと一緒に歩く未来。


大好きなあなたと、


ずっとずっと一緒にいる未来。



はるくん。はるくん。はるくん。



……あなたの存在は、私の全てでした。




はるくんを振り返ることなく、私はまた歩き出す。


するり、私の手が、彼の手をすり抜けていく。


冷たくなっていく指先。


もう二度と戻れないその場所。


もう二度と縮まることない私達の距離。




「結衣っ!!」




大好きなあなたの声は、もう聞こえない。


私の声は、もう届かない。


何もかも色を失った灰色の世界に、




私は堕ちていく───。