はるくんのお母さんは、はるくんの元までやってくると、はるくんの姿を見て目を見開き、痛々しく顔を歪めた。
はるくんのお母さんのそんな様子に、苦しいくらい胸が締めつけられる。
私のせいではるくんも、はるくんのお母さんも傷ついてる……。
私が、はるくんの側を望まなければ。
お母さんに秘密にしなければ。
お母さんを裏切らなければ。
はるくんを……。
はるくんを好きにならなければ。
こんなことには、ならなかったのに……。
「あなた、本当にどうかしてる!!いい大人が何も関係のない子供にこんなことして、恥ずかしくないの!?」
「母さん。いいから」
「でもっ……」
「何を言っているの?元はと言えば、あなたの息子がうちの娘をそそのかしたのがいけないんでしょう? あれほどうちの子に関わらないでと言ったのに!」
やめて……。
「あなた達が現れるまで、結衣は私に隠し事をしたり、嘘をついたりするような子
じゃなかった!!この子がこうなったのは、全部、全部、あなたの息子のせいよっ!!」
お願い。やめて。
はるくんを悪く言わないで。
何だ何だと集まり始める生徒達。
お母さんは、周りの目も気にせずヒステリックに喚き続ける。
あの日と……。
10年前のあの日と同じ。
もう二度と見たくないと思っていたお母さんの姿。



