はるくんは、私の両手を静かに自分の口元へと持っていく。


その一連の流れを、ただただ呆然と見つめていれば、私の手の甲にちゅ、とはるくんの柔らかな唇があたって……。


「悪い?」


そう言って、伏せていた瞼を持ち上げ私を見上げたはるくんに、一気に体温を上昇させられてしまった。



「そ、そそそそうやって、からかって……!!!」



いくら私の気持ちを知らないからとはいえ、今回ばかりはタチが悪すぎる!!


わかってる。


はるくんが言うヤキモチは、幼なじみが誰かに取られてしまう寂しさで、決して恋愛的なものではない。


わかってはいるけど、それにしたって……!!



「でも、安心した」


「え?」


「さっきの。結衣は、ずっと俺のだってことだよね?」



私の指に自分の指を絡め、逃がさないとでも言うように手を繋ぐはるくん。


不敵に片方の口角を上げ、今にも火を吹きそうな私の顔を見つめている。



……まさか、

幼なじみの独占欲が、これほどまでとは。




10年目にしてまた一つ、

私の知らない彼を、知ってしまった気がする。