「八木くん?どうかした?」
「あ!うん。ごめん!ちょっと解けない問題があってさ……」
どうやら八木くんは、自分のテスト勉強の方で苦戦を強いられている問題があるらしい。
みんなに教えている姿を見て思ったけど、八木くんはとても頭がいい人だと思う。
そんな彼でも解けない問題ということは、応用問題か何かかな?
「解けるかわからないけど、見てみてもいい?」
「お願いできる?この問題なんだけど……」
八木くんは、ノートを差し出しながら私の方へと身を乗り出す。
あ。この問題。
昨日解いたばかりの応用問題だ。
私も苦戦したから、よく覚えてる。
「八木くん。この問題ね───……」
八木くんに説明をするため、私も身を乗り出そうとしたその瞬間。
「わ」
ウエスト部分に回された腕が、私を強く後ろへと引き戻した。
「はる……くん……?」
「近い」
「え?」
「俺が教えるから。席交換して」
そう言うとはるくんは、八木くんの向かい側に座る私をどかし、自分がその席に移動する。
はるくん、何か怒ってるような……?
「……あのさ。尾上、何か勘違いしてない?」
「別に」
恐る恐るそう聞く八木くんを前に、無表情で答えるはるくん。
何が何だか。



