「いくら弱ってるって言っても、俺は男だからね?」


「はるく……」


「そういう煽るようなセリフ、言っちゃダメだよ」



事の状況を理解する前に、徐々にはるくんの顔が近づいてくる。



うそ……。


これって……。


もしかして……。



はるくんと私の唇の距離は1センチ。


ドクンドクンと脈打つ心臓を感じながら、これからくる衝撃に備えるかのようにギュッと目をつむった。



「……っ」



しかし、はるくんの唇は、私に触れる直前で軌道が逸れる。


そして、はるくんの体ごと、力なく私の横に倒れていった。



「はるくん……?」



上半身を起こし、恐る恐るはるくんを確認する。


「スー……」


はるくんは私の横で、規則正しい寝息を立てていた。



はるくん……寝てる……。


そっか、そうだよね。


きっと、寝ぼけてたんだよね。


そうだよね……?



「はは……」



私は立ち上がり、はるくんを起こさないようそっと部屋を出る。


それから、音がしないようにはるくんの部屋のドアを閉めると、足の力が一気に抜けて、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。



まだ、体が熱い。




「キス……しちゃうかと思った……」




ドキドキ煩い心臓が、一向におさまってはくれなくて。


私はその場にうずくまり、しばらく立ち上がることすらできなかった。