いい匂い……。
それにしたって時間がかかってしまった……。
私は、はるくんの家の前で佇んでいた。
両手に下げたスーパーの袋はパンパンに中身が詰まっていてここまで運ぶのに苦労した。
速やかに下校したはずなのに、はるくんの家に着くまでにこんなにも時間がかかってしまったのは、あれやこれや買う物を迷っていたせい。
あれだけ早くはるくんの側に行きたいと切望しておいて、どうしてこうもノロマなんだと自分を恨めしく思う。
それにも関わらず、ここまで来てまだ二の足を踏んでいるのだから、私は本当に救いようのない意気地無しだ。
「ううっ……」
さっきからインターホンに指を伸ばしては戻すの繰り返し。
このドアを隔てた向こうにはるくんがいるわけで、このボタンを押せばものの数秒で会うことができる。
なのに……。
どうしてこんなに緊張してるの私!!!
早鐘を打つような鼓動がうるさいくらい鼓膜に響いてくる。
はるくんのお母さんは明日まで帰らないって言っていた。
だけど、本当に?
急に帰ってくることはない?
やっぱりやめた方がいいんじゃないかな……。
……いや、だけどやっぱりはるくんが心配だし。
ここまで来たのに“やっぱりやめた”なんてそんなおかしなことはない。



