「はるくんだって忘れたくせに〜」


「俺は男だし」


「はいはい!どうせ私は女子力が低いですよーだ」



唇を尖らせ、ぷいっと顔を背けるとはるくんが再びクスッと息を漏らす音が聞こえてきて。





「まぁ俺は、優衣のそういうとこがいいんだけど」






────心臓が止まるかと思った。




驚いて振り向くと、柔らかく目を細めて微笑むはるくんがいた。



“優衣のそういうところがいいんだけど”



ねぇ、はるくん。


それって……どういう意味?



そう聞いてしまいそうになって、慌ててつま先へと視線を落とした。


心臓が爆発しそうなくらい速い。


耳まで熱い。


私ってば、何を勘違いしてるの?


はるくんは、別に深い意味を込めて言ったわけじゃないのに……。




水溜まりに雨粒が落ちて、そこに波紋が広がるのをひたすら見つめていた。



あんなに優しい顔で、あんな言葉を言うなんてずるい。


はるくんにあんなことを言われたら、私はまたはるくんへの“好き”が膨らんじゃうのに……。




「少しだけ、おさまってきたな」



さっきまでの土砂降りだった雨は少しだけ落ち着き、しとしととした梅雨らしい雨に変わっていた。