はるくんがその場を去っても、私はしばらくそこを動くことができなかった。
*
そして、その次の日の昼休み。
「あの……尾上くんいますか?」
……まただ。
声のした方を見ると、廊下から緊張した面持ちで教室の中を覗き込む女子生徒がいた。
彼女ははるくんを見つけるなり、頬をピンク色に染めて小さく会釈する。
クラスの視線が、自分の席で厚木くんと話しているはるくんへと注がれ、はるくんは一瞬で状況を理解したのか、首の後ろに手を当て小さく溜息をついて立ち上がった。
「はぁ!?悠斗、お前また告白!?今日で一体何人目だよ!!羨ましいから一人くらい代われ!!」
「うっさいバカ」
厚木くんにそれだけ言うと、はるくんは廊下で待つ彼女の元へ行き、そのまま教室を出ていってしまった。
今度は一体どんな子なんだろう?
どんな風にはるくんに告白をするんだろう?
それを聞いて、はるくんはどう思うんだろう?
今回もまた断るのかな?
それとも────。
「あんたの幼なじみ、最近忙しそうだね」
背後からそんな声がしてはっとする。
振り向くと、そこには無表情で私を見下ろす古賀さんが立っていた。
その手には売店の袋が下がっていて、メロンパンらしきものが袋から顔を出している。



