はるくんの顔を見ることができないのか、俯きっぱなしの飯倉さんの旋毛に、はるくんはいつものトーンで言葉を落とす。
「ごめん。付き合うとかそういうの、考えてないから」
はるくん……断っちゃうんだ……。
今まではるくんに告白をしてきた女の子の中でも飯倉さんはダントツに可愛い。
纏う空気も、ふんわり柔らかくて。
私と違って華やかでキラキラしてる。
いくらはるくんだって、飯倉さんみたいな人に告白されたら満更でもないはずなのに……。
そっか、でも断るんだ……。
“よかった”
なんて言葉が頭を過ぎって、それを振り払うように、私は思い切り頭を振った。
最低だ。私……。
私なんて、はるくんに想いを伝える勇気すらないくせに。
はるくんとの未来を望む勇気すらないくせに。
はるくんが誰かのものになってしまうのは嫌だなんて。
はるくんの未来は私のものじゃない。
そこに私はいない。
だから嫌だなんて思う資格、私にはないのに……。
はるくんに小さな声で何か言葉を告げると、涙を拭いながら走り去る飯倉さん。
その涙がすごくすごく綺麗で。
それとは対照的に、何だか自分が酷く汚れたものに感じて。



