ねぇ、お母さん?
何でお母さんは、そんなにはるくんやはるくんのお母さんを毛嫌いしているの?
その言葉が喉まで出かかって。
だけど、直ぐに飲み込んだ。
「うん。大丈夫。ちゃんと、わかってるよ。お母さんが心配しているようなことは何もないから安心して?」
お母さんごめんね。
もうこれは何度目の嘘だろう?
嘘つきな娘で、本当に……本当にごめんなさい。
でも、お願い。
もう、これ以上多くは望まないから。
はるくんとの未来なんて望まないから。
だからお願い、今だけは。
彼の側にいさせてください。
まだ何か言いたそうに、唇を動かしたお母さんを置いて、私はリビングを後にした。
*
「尾上くん!ずっと前から好きでした!!」
私って、どうしてこうもタイミングが悪いんだろう……。
その日の昼休み。
いつも通り裏庭で過ごした私は、5時間目の移動教室の準備をしなくてはと、いつもより早く裏庭を出た。
裏庭から教室に戻るには、校舎脇の駐輪場を通って昇降口に回り、上履きに履き替える必要がある。
予鈴まで後10分。
少し小走りで昇降口へと向かっていたら、人気のない駐輪場の入口付近で、はるくんが告白されている現場に出くわしてしまった。



