わわ。
どうしよう。
お母さん、絶対呆れてる。
お母さんは眉根を寄せると、大きなため息を一つついた。
「あなたのそのそそっかしいところ、一体誰に似たのかしら。もっとシッカリしてもらわなくちゃ困るわ。電話をもらって、お母さんがどれだけ恥ずかしい思いをしたと思ってるの」
「ご、ごめんなさい……」
「まぁ、いいわ。今はそんなことはどうでもいいのよ」
そんなこと……か。
お母さんにとって、私が崖から落ちたのかどうかは“そんなこと”なんだ……。
「担任の先生が、そんなあなたを助けてくれた男子生徒がいるって言っていたの」
「……っ!」
お母さんのその言葉に、心臓がドクッと音を立てる。
……はるくんのことだ。
もしかしてお母さん、はるくんが助けてくれたことを知っている……?
「それって……」
「あ!いけない!わ、私、今日早く学校に行かなくちゃ行けなかったんだ!!ちょっと準備してくるね!パン、焼けたらお母さん食べてね!」
「結衣!!」
慌ててリビングを出ていこうとする私を、お母さんは椅子から立ち上がり呼び止める。
「お願いだから。あの子には近づかないで」
「……っ」
「例え、何があろうと」
苦しそうな顔でそう訴えるお母さん。



