「それはそうでしょう! あんなに素敵なんだもの! 誰だって憧れるわ」
「そう? 私は全然。やっぱり好みはあるし」

「だ、そうだ。残念だったな。お前はあきらかに王子に好意を寄せてるってことで……次はその線で行くとするか」
「そうね。他に手がかりもないし、そうしましょ」
いつの間にか、アウレディオとフィオナの間だけで、話がまとまってしまっている。

「ちょ。ちょっと待ってよ! フェルナンド殿下だなんて、そんな私……私……」
「大丈夫だよ。なにも今すぐキスしろって言ってるわけじゃないんだから」
「当たり前よ!」

エミリアはだんだん、抵抗するだけ無駄だということを察してきた。

普段はあまり仲がいいとはいえないのに、こういう時になると、アウレディオとフィオナはすぐさま結託する。
今ももうエミリアを無視して、二人で相談を始めてしまっている。

当事者のはずなのに、どこか疎外感を感じずにいられないエミリアは、
(いいよ、もう……どうせ王子様となんて、接点だって作れるはずがないんだから……)
ふてくされて寝台に横になり、掛け布を頭から引き被った。

しかしエミリアは忘れていた。
彼女たち三人は今まだ、城の臨時衛兵の任についているのである。